• 2012.7.29

    『Cinemashka, cika-cika cinemashka / シネマシュカ、ちかちかシネマシュカ』

    ひとりの映画好きな少年を想像してください。少年は映画があまりに好きなので、「シネマ(映画館)」を連呼して、自分自身をかなぐり捨ててしまうのだから、言語がおかしくなってしまいました。そして、めまいを起こしてでも映画館に行こうとするのです。
    「愛情」のかかえるジレンマ。捨てたい自我と、捨てられない自我。「自分がいなかったら誰が映画を愛するというのだ。」どちらの道も選ぶことができない少年は、いかにして映画館へたどり着き、めまいの向こうに何を見たのだろうか。
    このアルバムは一見して映画をテーマにしていそうですが、本当は、かの少年がめまいをしながら辿り着いた映画館で見聞きした少年の想像力の世界、とその限界、を示そうとしています。

    いいえ、もっと本当は、音楽を愛する僕自身のめまい、を示しているのです。

    ***

    ところで、およそ7年前、留学をしていた僕は誰からも頼まれずに最初のアルバムを一人で作っていました。屋根裏部屋で、自分自身に鍵をかけ、想像力と言っては聞こえはよいけれど、言わば頭の中で起きた幻想を音にしていました。
    この全き自己完結の作品から7年、当時からは想像できないほど多くのスタッフ(彼らはみな友人である)や演奏者(彼らはみな上手である)に支えられ、また仕事に恵まれ、今日に至りました。

    僕自身の向上も少しはあったし、なにしろプロダクション全体の能力が各段に上がったとしても、しかしながら、なぜかこのアルバムは、一枚目と良く似ている。少なくとも僕にとってはとてもよく似ています。あたかも、自己完結していた幻想が、目の前で現実化しているかのようなのです。

    僕はいま、そのことにかなり恐れおののいています。
    だって、本来起きてしまったら困るのが幻想の世界です。もちろん、筋書きとしての幻想が現実化するのだから、偶然的な現実と分けて、あえて上演と呼んだほうが良いかも知れません。しかしその緊張と幸福が入り交じる気分は、取り消し不可能なアルバムづくりにおいては、舞台の上演ともひと味違っているは事実です。

    いったい、このアルバムにはどれだけの人が力を尽くしてくれたのだろう。かつてのように一人でやっていたのとは根本的に違う。しかし、必要とされていることが起きていて、そのための役をみんなが的確に演じているのだと思う。重要なのはここだ。それだけ一層、幻想という認識の彼方を信じ実行することの重みが増してくるからだ。幻想を一人のこととして済ませるなんて、とても簡単だからだ。 すべてのスタッフと演奏者に心からの感謝を。そして、このアルバムを手に取って聞いてくれるお客さんに、感謝と尊敬を。

    最後に、今回はいっちょまえにシングルカットをしてみました。しかも、アナログレコードでそれをやってみます。長くなるので書けませんが、いろんな思いが込もったアナログレコードです。植原亮輔さんのデザインも相変わらず素晴らしいので、ぜひお手にとって頂けたら幸いです。

    阿部海太郎

    7 inch single (Analog) 『Cinemashka, chika-chika cinemashka / シネマシュカ、ちかちかシネマシュカ』
    A1 Cinemashka, chika-chika cinemashka
    B1 Havanera de la montagne
    B2 Cinemashka, chika-chika cinemashka (piano solo)

    3rd Album (Audio CD) 『Cinemashka, chika-chika cinemashka / シネマシュカ、ちかちかシネマシュカ』
    Track list:
    1 Cinemashka, chika-chika cinemashka
    2 All the way to find my buddies
    3 Oda al verano
    4 Sarabande
    5 Silhouette des heures
    6 Cardigan
    7 Ombrelle
    8 Havanera de la montagne (piano solo)
    9 Serenade de fruits
    10 Your book and my bookmark
    11 Samedi 9H.
    12 Samedi 14H.
    13 Samedi 26H.

    <La Suite “Mariko et Futaba”>
    14 Mariko et Futaba : L’interlude
    15 Mariko et Futaba : Lento assai
    16 Mariko et Futaba : Premier  thème
    17 Mariko et Futaba : Deuxième thème
    18 Mariko et Futaba : Larghetto

    19 Mariko et Futaba : Octette
    20 Eiga, Eiga
    21 Cinemashka, chika-chika cinemashka (piano solo)

    Musician :
    piano, violin, accordion, field recording etc. : Umitaro ABE

    violin : Rie Kodera, Chisato Maehara, Megumi Kasugai, Kazuha Takahashi, Yurie Kawano, Hiroko Ninagawa, Ami Kamata, Ai Takeuchi, Ayuko Sakamoto, Marie Suga, Erina Sato
    viola : Satoshi Kitamura, Akino Aono, Haruka Abe
    cello : Kazune Koshikawa, Fumie Kato, Masateru Nishikata
    contrabass : Yuki Nagata, Naomi Kohata

    piccolo : Kan Saito
    flute : Tomoko Hirata
    oboe:Erina Sakimoto, Yukie Kato
    fagotto:Sayaka Nakata
    flugelhorn : Shutoku Sato
    trombone : Yuka Tanaka
    tuba : Jinya Kimura
    tenor saxophone, bass clarinet : Kosuke Matsunobu
    tambourine : Genichiro Furukawa
    percussion, drums : Kensuke Oyama
    mandolin : Kozue Katsuragi

    sound effect (bell) : Young Chang Koh
    camera (click) : Keitaro Onuma