• 2011.2.19

    図形音楽と愛すべき「平面性」

    それは初めて聴く種類の音楽。作曲という意思からは多分生まれることのない、ちょっと変わったメロディーとリズムを持っています。

    シート(楽譜)に穴をあけると、それを音にしてくれる手廻しオルゴールがあります。クリスマスの夜、そのオルゴールを使って行ったパフォーマンスで、参加してくれたD-BROSの植原亮輔さんと渡辺良重さんにもオリジナルのシートを作ってもらいました。「あくまでグラフィックとして良いと思うものを作って下さい」と頼んで、半信半疑で演奏してみると…えっ!! 思わず耳を疑う、不思議でキレイな音楽が!

    良重さんの作品はクリスマスに合わせて、もみの木が並び、その向こうに山が見えます。最後は「流れ星が飛んで来た」とのこと。植原さんの作品は、「規則的なものと不規則なものコンビネーション」がテーマです。

    もちろんこのオルゴールのシートはハ長調(あるいはイ短調自然的短音階、そのほかの教会旋法)のスケールに基づいています。また、「同時に鳴る音は最大で三つにしてください」と、約束事をしたのは確かです。それでも、お二人には作曲という意識はなかったはずなのに、音楽として、しかもチャーミングな音楽として現れた事実に驚きます。

    グラフィックが良くても音楽的に破綻するケースもあるだろうし、また名曲のグラフィックが必ずしも美しいとは限らないので、興味深いのは、きっとグラフィカルであり且つ音楽的でもある特別なケースが存在し、それはいつでも訪れるわけではないだろう、ということです。そして、音楽の側から見れば、そのまだ見ぬルールは作曲の歴史とは縁のないものだし、もちろん、例えばジョン・ケージのように作曲を放棄することで得られる世界とも異なります。もうひとつ別のメソッドを、時間と点描についてのこのケーススタディは予感させます。

    音楽と視覚についての議論はもともと興味があったけど、如何せん壮大になりすぎるなあと思っていたところ、オルゴールのこの愛すべき「平面性」は、もうちょっとピントを合わせて、図形ー音楽論を浮かび上がらせているかのようです。植原さん、良重さんと、オルゴールのワークショップをやろうと話していますが、楽しみです。

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    しばらくいろんなコンサートが続きます。

    2月19日の暗闇コンサートでは、久しぶりにパーカッションを入れたカルテットで演奏します。このカルテットは4、5年前にやっていたのですが、「ふたを開けるまではホラー、開けたらおもちゃ箱」がコンセプトです。ともかく実験!します。 detail→

    4月23日に川上未映子さんとのポエトリーリーディングがあります。川上さんがちゃんと爆発できるように?武者震いしています。音のイメージを総動員して、もはやリーディングではなくシアターピースになったら良いなあと思っています。会場が遠い方もいるかもしれませんが、ぜひ遊びに来て下さい! detail→

    そして4月29日はトウヤマタケオ師匠と三回目の連弾です!そのピアノについて、「トウヤマさんは男で海ちゃんは女だった」と、建築家の藤原徹平さんに言われたことがありますが、木こりと船乗りでも、鮭と熊でもなんでも良いですが、トウヤマさんと僕の音楽が戯画化されて生まれ変わる感じがあります。きっと。 detail→

    阿部海太郎